●Vol.1「カルト女優の渚ミミが監督の秘密を探る!」
●Vol.2 「緊縛師 荊子が新レーベル作品の秘密を探る!」
――本日は安藤ボン監督と緊縛師の荊子さんに新作SM作品の『ピリオド』と『SMアヴァンギャルド』を含め、いろんなお聞きしたいと思います。現場はどうでしたか?
荊子:
楽しかったですよ。
ボン:
4日撮りでみんな大変だったと思います。
荊子:
編集したのを早く見たいです。今までは自分の縛りのプレイがポンポンとあったので自分でもなんとなく予想ができた。でも今回はカット割りが多いし、鎌倉に行ったりして、シチュエーションがたくさんあった。それに会話も全然ないから、どう映像になるのかなって…。
ボン:
監督としては自分の頭の中では、出来上がっているんですけれどね。まあ見てからのお楽しみってことで。でも今回はすごく撮影自体も大変で、迷惑をかけてすいませんでした。
荊子:
そう思ってないでしょ?
ボン:
(笑)。それで、新作の『ピリオド』は今までの作品にわりと近しい内容なのですが、もっと切り口を変えつつ、縛りに縛る側と縛られる側の心理描写のようなものを増やしてみたらどうなるのかなという感じです。ただ緊縛が入っているからSMビデオということではなく、お互いの微妙なプレイのやりとりを映像に反映させて、もっとリアルな感触の内容にしようと思っています。
荊子:
うんうん。縛るプレイって非日常だなって思ってた。非日常だから良い面があるということはもちろんだけど、今回の撮影で日常にもSMの要素はあるなってつくづく思った。
ボン:
日常の延長線上みたいなね。非日常って我々がただ頭の中で頭の中でイメージしているだけのことなんですよね。欲望が附随している日常じゃない世界やイメージを頭の中で、日常と非日常に自分勝手に振り分けているんだけなんですよね。だから実はどちらがどちらなのか分からない。
荊子:
そうかもしれないね。そういえば『ピリオド』というタイトルの意味は?
ボン:
思いつきです。ただピリオドって終止符のことで、私はしるしって意味を持たせてる。
荊子:
人と関わったとかいう意味でのしるし?
ボン:
お互いにつけられたしるしみたいな感じですかね。
荊子:
へえ。なるほど。今回は4日間撮影があって、縛るシーンがあるまで2日間あったんだよね。それまではふたりで見つめ合うだけとか、すれ違うだけとか。撮影だからモデルになる彼女は縛られることがわかっているんだけど、その中でじらされている感じがした。それが私には良くて。いつもは現場を組んで「はい、縛ります」というのとは全然違う感じがした。それがピリオドというしるしをつけるっていことにつながってるのでは? 縛りって肉体的にしるしをつけるってことになる訳だけれど、今回みたいな方が精神的なしるしをつけるっていう感じで、その方がSMという感じがして、アドレナリンが出た。
ボン:
そうですね。毎度の撮影では荊子さんに曖昧なニュアンスでかつ感覚的なことを求め過ぎているんですが、結局SMの映像って作り込むってことができないし、荊子さんが持ちうる雰囲気だとかをそのまんま出してくれれば、それで私の作品の場合はよくってね。
荊子:
うん。『SMアヴァンギャルド』のお話を頂いたときから、絶対したいって思っていたんだけれど、初めて今回の台本を読んだ時に、初めのプロットの文章が気に入って。ああ、なるほどねってあの説明ですべてが分かる感じがした。
ボン:
あれも全部思いつき(笑)。でも荊子さんは縛る側でストリッパーマチコは縛られる側。荊子さんが元々持っているびくびくした感じ?なんていうのかな。脆く、柔らかい感じを縛る側が持っている。そして縛られる側のマチコが精神的にこう堅く強い感じ。そんなふたりが作品の中でプレイをしたり、一緒に食事をしたり、遊んだりする中でどんな風になっていくのかを自分が見たかった。作品自体は作り物であるけれど、実際行なわれている所作や雰囲気はすべてリアルなんですよね。荊子さんの脆弱な感じも(笑)。
荊子:
え!私そんな脆弱じゃありませんよ。そんな勝手にキャラを作らないで下さい。それで『SMアヴァンギャルド』と『ピリオド』の違いって何ですか?
ボン:
どちらも荊子とストリッパーのマチコが出演しているけれど『ピリオド』は、緊縛シーンが多いバージョン。『SMアヴァンギャルド』は緊縛シーンも入ってますが、もっと感覚的な部分での映像というか、ふたりの叙情詩的な内容になってます。自分が考えるSM的概念をいろいろな世代の人やジャンルの人に見てもらいたくて今回『SMアヴァンギャルド』のタイトルで一般向けな作品を出そうと思いました。
荊子:
それって具体的にどういう違いなの?
ボン:
まだできてないのではっきりした説明は難しいです。どちらも六月末に発売予定で、『SMアヴァンギャルド』には今回スチールもお願いしている写真家の小出直穂子さんの作品を小冊子にして封入する予定です。
――直接的な緊縛のエロスを扱うのがピリオドで、精神的というか感覚的な緊縛を描くのがSMアヴァンギャルドと思っていればいいのですか?
ボン:
そうですね。そんな感じです。
――荊子さんはどうしてボンさんと共同制作をしているのでしょうか?
荊子:
…なんかあったんだよね。感動的な話があったんだけれど忘れちゃった。確か、縛りに行き詰まっていた時に、安藤さんはすでに他で仕事をしていて。それで、私の方は周りが敵ばっかりというか、自分の縛りのスタイルについて批判ばかりを受けていたんです。いろんな所で、「マニアじゃないね」とか「ボンデージを着ない」とか。そんな時に「そのスタイルがいい」と言ってくれた唯一の人だったんです。自分のスタイルがまだ確定されていない時に、他に流されないように食い止めてくれたって感じですかね。
――荊子さんのスタイルは他の縛師と比べてどう違うと思いますか?
ボン:
とても身近な感じを受けたんです。他の高名な縛師さんって編集者やプロダクションやスタッフにあがめられて持ち上げられているような感じを受けたことがあるんですが、そうなってくるとなんだか手が届かないような、気遅れした気分になって。ただその人が縛っているからその縛りがすごいというか…。
荊子:
それはそこには感情がないという感じ?確かにその縛師のおじさんと女の子の間には多分何かがあるんだろうけれど、なんかあまり濃厚な匂いが感じられない気がするよね。
ボン:
そう。荊子さんのスタイルはおかしみと体温を感じさせるスタイルだと私は思います。
荊子:
女王様とM女みたいに、ビジュアル的にもそうなんだけど、強い者と服従する者という分かりやすい関係より、私が上で、される側は下というなんとなく順位はあるけれど、それはあやうい順位というか…。下手するとひっくり返ってもおかしくない。いじめてるつもりでも実は相手の手のひらの上にいるんじゃないか。自分が転がしているようで、本当は転がされているんじゃないか、とか。私はそういうスタイルなんじゃないかな。でも、それをわざと見せているのではなくて、自然にそういうふうになってしまっている。だから分かりにくいって言われたりすることはありますけれどね。
ボン:
まさにそこが荊子さんのスタイルの真骨頂だと思います。ずっとそのままでいてください。
――今回、新しい切り口でSMの作品を制作されているわけですが、そのおふたりの共通するSM観というのはどんなものなのでしょうか?
ボン:
感覚的なものなので言葉では説明しづらいですね。でも人間のおかしみや愚かしさやそういうものがSMにはつきものだということでは一致してるんじゃないですか?
荊子:
うん。あとはフェチの感覚が似ているとか?曖昧な感覚の部分は口にはうまくできないけれど、具体的に例えばカメラアングルとか。そういう点で「おぉっ、いいね」という所がかぶる。そういえば、毎回作品の衣装が独特だと思うんですけれど、そのインスピレーションはどの辺りからくるんですか?
ボン:
私はコスプレというのがあまり好きではなくて。だからモデルに着せる衣装や荊子さんが着る衣装は、コスプレではないところで誇張した雰囲気がでるようにと常に考えています。だから衣装が、ワンピースの柄にしても六〇年代や七〇年代に着ていた変な柄だったり、しょぼくれた人妻が着てそうな中途半端な丈のタイトスカートだったりする(笑)。
荊子:
縛師でもゴージャスだったことが一切ない(笑)。それがまたいいのかな。ひとつの世界観を作っているのかも。これだけひとつの世界観をもって洋服なりロケーションを選んで作品を作っているって他にないと思う。
ボン:
確かにそうかもしれないですね。似合う、似合わないを全然考えていなくて、ただその人に奇妙な印象をあたえる小物や衣装をつけさせるのがとても好きなんです。
荊子:
確かに出てくれる女の子は「え、こんなん着るの?」って顔をしてる(笑)。
――衣装の他にも生のモツが登場したり、新作にも変な料理や奇妙なシチュエーションが多いようですが?
ボン:
ださくて奇妙で意味のない感じが好きなんです。それもあまり何も考えてなくてただの思いつき。
荊子:
またか!(笑)でもあたしは食べるって行為はけっこう恥ずかしくて…。映画などで食べるシーンを見る分にはエロスは感じないのに、実際に自分が食べたり、食べさせたりするシーンがあるとすごくエロスを感じる。だから安藤さんの食事シーンはそれを表現しているのかと思った。
ボン:
何か物を食べている人を見ていると無防備で、とてもかわいらしい印象を受けますよね。なんだかそれって強制オナニーをさせてそれをじーっと見ている感じに似てる。
荊子:
確かに似てる!(笑)
――今回出演のマチコさんを含め、おふたりの作品に出ている女の子はとても魅力的ですが、どんな方たちですか?
荊子:
みんな素人の真性マゾの子です。
ボン:
そのうえスタッフもみんな真性マゾなんです。マゾ集団です(笑)。
荊子:
私は違いますけれど!安藤さんはそうなんですよね?
ボン:
どちらも持ち合わせてますが、どちらかといえばマゾかなあ。だからマゾに関しては鼻が利くし、モデルさん達も快く私の作品に出演してくれるのかもしれませんね。そうだったらいいです。今後の私の作品に出演していただけるマゾな人を募集中です!マゾ集団で楽しい作品を作りましょう。
荊子:
私は違いますって(笑)。
(聞き手:もも小春 2005.6月)
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